
山梨文芸協会機関誌「imagination イマジネーション」 2006.1 第3号 超並列処理型高性能コンピューター、RS6000SP「ディープブルー」。それはさながら神の眼のようだった――
夜になると人間に混じってお化けが買い物にやってくるコンビ二「のらねこマート西墓場前店」。お化けが出る時間帯「お化けシフト」に勤務する大学生、『やすな』と『ながら』の間では今、チェスが大流行だった。なかでも1997年にチャンピオン:ガルリ・カスパロフがIBM製スーパーコンピューター「ディープブルー」と対局し、やぶれた事件をいまだ、語り草にしていた。
そんなおり、チェスを指す彼等の横で店長が面接をはじめている。面接をうけにきたのは『千束登美子』という美少女。
彼女は人間の過去と未来を見通す、神秘の眼を持っていた……。
はじらい。
ウリ専、いわゆるゲイ風俗。我らが主人公、三毛ちゃんはノンケウリ専BOY。女の子が好きなのに中年男相手に援助交際なんてしているお茶目な19歳で、新宿二丁目を出て、高田馬場のデートクラブで働いている。そこは男も女も売るという構想のもと、設立された画期的なデートクラブだった。三毛が恋するのは店長、羽品さんの内縁の妻、サナちゃん。彼女は通称、首都圏で一番、高い女といわれている。「男とのセックスはなまこを食べるより簡単だ!」と嘯く三毛ちゃん。やがて物語は山下清貼り絵盗難事件と絡み合う。
都築隆広の文学界新人賞受賞第二作
武蔵野(三鷹)を舞台にハーフの看板持ちジョイ、作家志望の浪人生「蛞蝓」、ドーナツショップのウェイトレス「大家の娘」の三角関係を描いた、都築隆広のデビュー作。第91回文学界新人賞受賞作。
葬儀屋の看板持ちジョイに嫉妬と羨望を覚える陰気な僕(蛞蝓)は、街のドーナツショップ「のらねこドーナツ」のウェイトレス、大家の娘に片想い中。僕は国木田独歩のように真の文学を模索する傍ら、看板屋のジョイを陥れるある計画を思いつく。嫉妬や欲望に身を焦がしながら僕とジョイが手に入れたものは本当の文学か、それとも絶望か、はたまた希望か・・・・・・?
発表当時、ブッキッシュ(書物的な)でありつつポップな文体が一部の文芸評論家達の間で話題になり、「文学もどき」と酷評された作品。メルヘンチックな架空の三鷹の街や国木田独歩を含めた引用文も賛否両論だった。